「うまいかまぼこをつくるには、解凍が命」。 それが、創業者・小松中司の教えです。 かまぼこの原料となるタラの多くは、 漁獲されるとすぐ船上で加工・冷凍されますが、 天候や気温、湿度次第で解け具合が変わり、 味が落ちてしまうこともあります。 貴千では、解凍室を使わず、あえて常温で解凍。 職人たちがすり身の温度、解凍時間、 置き方に至るまで徹底的に管理し、 身の力を最大限に引き出せる状態を作り出してから製造します。 先祖伝来の「解凍術」。 それが、かまぼこ本来の味と食感を引き出しているのです。
解凍され、眠りから目を覚ましたすり身は、 まるで赤ちゃんのように繊細です。 その繊細さは、ちょっとした温度や湿度の変化によって、 身の状態が刻一刻と変わってしまうほど。 また、扱いが雑だと身が粗くなり、 身の力を最大限に引き出すことができません。 だからこそ、すべてを機械任せにせず、 手の感覚で常に身の状態を確かめながら、 丁寧に摺ることを心がけています。 塩分を含むすり身に常に触れているため、 膨れて太くなった職人たちの無骨な手。 それこそ、貴千のこだわりを表す何よりの証です。
かまぼこの多くは、成型、蒸しを経て完成しますが、 貴千では、蒸す前に「坐り(すわり)」という 低温熟成の工程を入れています。 低温でじっくり寝かすことでたんぱく質が深く熟成され、 噛んだときに歯を跳ね返すような、 あのぷりぷりの食感が生まれるのです。 「坐り」の語源は、赤子の首が「すわる」こと。 坐りは、少年へ育つためのエネルギーを蓄える大切な時間です。 貴千では、時間をかけて赤子を少年へと育てあげ、 蒸しや包装などを経て青年となったかまぼこを、 皆さまのもとへと送り出しています。
熟練の職人が同じように解凍し、 同じように摺ったとしても、 まったく同じものはつくることができません。 なぜなら、すり身は生きているからです。 刻一刻と変わる身の状態を、 長年の経験や勘によって感じ取り、 魚が持っている力を最大限に引き出すと同時に、 ブレのない商品を作る。 それが貴千のものづくりの真髄であり、 かまぼこの職人の技なのです。 貴千はこれからも、いわき小名浜の海とともに、 職人の技にさらに磨きをかけ、 かまぼこを精魂こめて育てていきます。
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